英語を勉強していて、「なぜここはaなの?」「どうしてtheが必要なの?」「なぜ何も付かないの?」と疑問に思ったことはないでしょうか。
冠詞は、日本語にはほぼ同じ仕組みがないため、日本人にとって感覚的に理解しにくい文法項目の一つです。
しかし、a・an・the・無冠詞を別々のルールとして暗記する必要はありません。
「聞き手は、どれのことか特定できるか?」
です。
この記事では、日本語訳から冠詞を考えるのではなく、英語では名詞をどのように捉えているのかというところから、a・an・the・無冠詞の使い分けを説明します。
目次
⑴ 日本人にとって冠詞が難しいのはなぜ?
日本人が英語の冠詞を難しいと感じる大きな理由は、日本語ではa・theに相当するものを意識しなくても会話が成立するからです。
例えば、日本語なら、
と言っても意味は通じます。
しかし英語では、
最初は a book、次は the book になっています。
「1回目だからa、2回目だからthe」と覚えることもできますが、それだけでは冠詞の仕組みは理解できません。
なぜなら、初めて話題に出る名詞でもtheを使うことがあるからです。
冠詞は「名詞に付ける案内表示」と考える
例えば、テーブルの上にリンゴが5個あるとします。
その中のどれでもよいので1個取ってほしいなら、
と言えます。
この an apple は、
という感覚です。
ところが、その中の1個を指さしていて、話し手も聞き手もどのリンゴか分かっているなら、
となります。
ここでのtheには、
という感覚があります。
カメラの映し方に例えてみる
冠詞は、カメラで名詞をどのように映しているか、と考えると分かりやすくなります。
たくさんいる犬の中から、まず「ある1匹」をカメラの画面に入れたようなイメージです。
その後、
と言えば、今度は先ほど画面に入ったその犬にカメラを寄せています。
一方、
なら、特定の1匹を映しているのではなく、犬という種類全体を見ています。
a / an = いくつかある中の「どれか1つ」
the = 「どれのことか分かるもの」
無冠詞 = 特定の1つではなく、種類・物質などを広く捉える場合など
では、実際に英文を作るときは、何を見ればa・the・無冠詞を選べるのでしょうか。
⑵ 冠詞は3つの問いで判断する
冠詞を決めるときに、いきなり「aかtheか」と考えるのはおすすめできません。
まず、次の3つを順番に確認します。
可算名詞か、不可算名詞かを確認します。
基本的には次のように考えます。
| 名詞の状態 | 基本的な形 |
|---|---|
| 聞き手がどれか特定できる | the |
| 特定されていない単数可算名詞 | a / an |
| 一般的・非特定の複数可算名詞 | 無冠詞 |
| 一般的・非特定の不可算名詞 | 無冠詞 |
⑶ a / an|「どれか1つ」を表す
a / anを使う基本条件は次の3つです。
② 単数
③ 聞き手がまだどれか特定できない
話し手自身は、実際に見た犬なので「どの犬か」を知っています。
しかし、この発言を初めて聞いた相手には、まだどの犬のことか分かりません。
そこで a dog になります。
aとanはスペルではなく「音」で決まる
一般には子音の音の前ではa、母音の音の前ではanを使います。
universityは文字では母音字uから始まりますが、発音の最初は /j/ の子音なのでa universityです。
一方、hourはhを書きますが、hを発音しないため母音の音から始まり、an hourとなります。
職業にもa / anを使う
職業を表す単数可算名詞にも、通常a / anが必要です。
⑷ the|「どれのことか分かる」を表す
theを単純に「その」と訳して覚えると、使い方を誤りやすくなります。
基本となる考え方は、
です。
① 一度話題に出ている
2文目では、どのカメラか聞き手にも分かるためtheになります。
② その場の状況から分かる
部屋にいて、閉めるべきドアが明らかな状況なら、
と言えます。
doorが会話に初めて出てきたとしても問題ありません。
初登場でも、相手がどれのことか特定できればtheを使えます。
③ 後ろの説明によって特定できる
manは初めて出ていますが、standing by the windowによって「どの男性か」が特定されています。
④ 共通認識からどれか分かる
話している世界・状況の中で何を指しているのか共通に理解できるものにはtheが使われます。
⑸ 無冠詞|何も付けないのにも意味がある
日本人学習者は「名詞の前にはaかtheを付ける」と考えがちです。
しかし、何も付けないことも英語では重要な選択です。
複数可算名詞で一般論を表す
特定の犬ではなく、「犬というもの」を広く述べています。
不可算名詞を一般的に述べる
特定の水やコーヒーではないため、冠詞を付けていません。
不可算名詞でも特定されればtheになる
coffeeは不可算名詞ですが、on the tableによってどのコーヒーか特定されています。
特定できれば、不可算名詞にもtheを使えます。
⑹ a・the・無冠詞を並べて比べる
ここまでの違いを、同じdogという名詞で比較してみましょう。
| 英文 | どのように捉えているか |
|---|---|
| I saw a dog. | たくさんいる犬の中の、ある1匹 |
| The dog followed me. | どの犬か聞き手にも分かる |
| Dogs are intelligent animals. | 特定の犬ではなく、犬という種類全体 |
冒頭の「カメラ」の例で考えると、
→ ある1匹を画面に入れる
the dog
→ その犬にカメラを合わせる
dogs
→ 個別の犬ではなく「犬という種類」を広く見る
と考えることができます。
a・the・無冠詞を別々の暗記項目にするより、この違いを理解することが重要です。
⑺ 冠詞を決める前に可算・不可算を見る
冠詞を正しく使うには、まずその名詞が可算名詞か不可算名詞かを確認する必要があります。
informationは通常、不可算名詞なので、1つを表すa / anをそのまま付けることはできません。
一方、
chairは数えられるため、単数ならaを使えます。
可算名詞・不可算名詞そのものの判断については、次の記事で詳しく説明しています。
⑻ 日本語訳だけで判断すると間違える
冠詞を日本語訳だけで考えると、判断できないことが少なくありません。
例えば、次の2文を比べてください。
日本語ではどちらも「窓」と訳せます。
しかし英語では、
→ どの窓か相手にも分かる
a window
→ 数ある窓の中の1つで、まだ特定されていない
という違いがあります。
⑼ 冠詞の有無で意味が変わる表現
英語には、冠詞を付けるかどうかで名詞の捉え方が変わる表現があります。
代表例がschoolです。
ここでは「学校という建物」を意識するより、学生として授業を受けるという学校本来の機能が中心です。
一方、
では、具体的な「その学校」という場所・建物を指しています。
school・bed・churchなど、特定の名詞で冠詞を使わない表現については、別記事で詳しく扱います。
⑽ 英作文ではどう判断する?
英作文で冠詞に迷ったときは、次の順番で考えてください。
まず可算名詞か不可算名詞かを確認します。
単数可算名詞は、原則としてa / an・the・my・thisなど何らかの限定語が必要です。
話題・状況・説明・共通認識などから、どれか分かる。
ただし、意味によってsomeなど別の限定語を使うこともあります。
実際に判断してみる
「公園で犬を1匹見ました。」を英語にするとします。
↓
② 1匹なので単数
↓
③ 聞き手はまだどの犬か知らない
↓
a dog
続けて「その犬が私のところへ走ってきました。」なら、
↓
② 単数
↓
③ 先ほどの犬だと聞き手にも分かる
↓
the dog
名詞の種類 → 数 → 特定できるか
という順序で考えると、日本人でもかなり論理的に判断できます。
⑾ 間違いやすいポイント
① 初めて出た名詞には必ずaを付ける?
いいえ。
初登場でも、状況からどの窓か分かればtheを使えます。
② theは必ず「その」と訳す?
いいえ。
日本語では「その駅」と訳さなくても自然です。
③ 不可算名詞にはtheを付けられない?
いいえ。
どの水か特定されていればtheを使えます。
④ 複数名詞にはtheを付けない?
いいえ。
複数でも、どの生徒たちか特定されればtheを使います。
⑤ 単数可算名詞なら必ずa / an?
いいえ。
my・your・this・thatなど別の限定語が付いている場合、通常a / anやtheを重ねません。
× a this book
⑿ 理解度チェック
次の問題で、a / an・the・無冠詞を自分で判断できるか確認してみましょう。
次の空欄に最も適切なものを入れてください。
I saw ( ) woman carrying a large suitcase near the entrance.
① a ② the ③ 無冠詞
womanは単数可算名詞です。この時点では聞き手にどの女性か分からないため、a womanとなります。
次の会話の空欄に最も適切なものを入れてください。
A: Where is Tom?
B: He's in the kitchen.
A: Please tell him to turn off ( ) light before he leaves.
① a ② the ③ 無冠詞
会話の状況から、どのlightを指しているか聞き手が判断できるため、the lightが自然です。名詞が初登場かどうかだけでは判断しません。
次のうち、「私は猫という動物が好きです」という一般的な意味になる英文を選んでください。
① I like a cat.
② I like the cat.
③ I like cats.
特定の猫ではなく、猫という種類全体を一般的に述べる場合、複数形+無冠詞が基本的で自然です。
次の英文の誤りを直してください。
She gave me an useful information.
informationは通常不可算名詞なので、an informationとはしません。まず冠詞を選ぶ前に、名詞が可算か不可算かを確認することが重要です。
次の日本語を自然な英語にしてください。
「昨日、新しいレストランを見つけました。そのレストランは駅の近くにあります。」
I found a new restaurant yesterday. The restaurant is near the station.
最初にrestaurantを出す時点では聞き手にどの店か分からないためa new restaurant。2文目では先ほどの店だと分かるためthe restaurantになります。
⒀ まとめ
冠詞は、日本語の「1つの」「その」という訳だけで覚えようとすると、使い分けが難しくなります。
重要なのは、名詞を見たら次の順番で考えることです。
② 数えられるなら単数か複数か?
③ 聞き手は「どれのことか」特定できるか?
| 判断 | 基本形 |
|---|---|
| どれか特定できる | the |
| 特定できない単数可算名詞 | a / an |
| 一般的な複数可算名詞 | 無冠詞 |
| 一般的な不可算名詞 | 無冠詞 |
特に覚えておきたいのは、
ということです。
a・the・無冠詞を別々のルールとして暗記するのではなく、「名詞を相手にどう見せているか」という1つの仕組みとして捉えると、冠詞の使い分けが見えやすくなります。