火星衛星探査計画(MMX)機体公開に関する記者説明会

2026年8月13日、種子島宇宙センター 第3衛星フェアリング組立棟(SFA3)にて火星衛星探査計画(MMX)の機体公開が行われました。

MMX往路モジュール(左)と復路・探査モジュール(右)

MMXは2026年にH3ロケット(24形態)で打上げられ、翌2027年に火星圏へ到着、フォボスの擬周回軌道に入ります。フォボスは火星の重力が支配的で、MMXにフォボスを周回させるためには表面から数kmと非常に低い高度を高速で飛ばなくてはなりません。そこで少し偏心させた火星周回軌道にMMXを投入することで、MMXがフォボスの軌道の外側に来たり内側に来るような状態を作り出します。この際に用いられる軌道が擬周回軌道(Quasi-Satellite Orbit, QSO)です。

QSOから詳細にフォボスを観測したMMXは、次に着陸のリハーサルを行います。その際にCNESおよびDLRが共同開発したローバを展開してフォボス表面探査を行い、そこで得られたデータを参考にしてMMX自身もフォボスに軟着陸し、サンプルを採取します。

探査モジュールの-Z面には各種観測機器、サンプル採取機構、ローバなどが密集する
CNES・DLR共同開発のローバ。MMXに先駆けてフォボスに降り立ちデータを集める
MMXを火星圏まで連れていく往路モジュール
往路モジュールはIHI製の2液式450Nスラスターを4基装備している

MMXは往路モジュール、復路モジュール、探査モジュールの3モジュールで構成され、火星圏到達までの推薬と推進系で構成される往路モジュールは、火星圏到達後に切り離されます。フォボスの詳細観測およびサンプル採取を行い、その後、もうひとつの火星衛星・ダイモスをフライバイ観測してから探査モジュールを切り離し、2030年、復路モジュールのみで火星圏を出発します。2031年に地球へ帰還したMMXは、「はやぶさ」「はやぶさ2」同様にサンプルを収めたカプセルを分離、カプセルはオーストラリアで回収される予定です。

MMXのサンプル採取には2種類の採取機構が用いられます。ひとつはマニピュレータを使ってフォボス表面にコアラーを突き刺してサンプルを採取するC-SMPです。採取後はコアラー内のサンプル容器をマニピュレータでつかみ、リターンカプセルへ移送します。

C-SMPの全容。中央の黒いマニピュレータの先にあるのがコアラ—機構
コアラ—機構のクローズアップ。光沢のある3つの筒がコアラ—。右側のコアラ—の下に見えるのがP-SMPのサンプル容器を把持するエンドエフェクタ

もうひとつは着陸脚の脚先から加圧ガスを吹き出し、巻き上がったフォボス表面の物質をサンプル容器に格納するP-SMPです。P-SMPは米Honeybee Robotics社製で、サンプル容器をリターンカプセルへ移送する際にはC-SMP同様マニピュレータが用いられます。

脚部に取り付けられたP-SMP。脚先から出した加圧ガスで舞い上がった表面物質を吸い込み、脚の付け根側にあるサンプル容器(画面右下側)に格納する
リターンカプセルは「はやぶさ」「はやぶさ2」のカプセルに似た形状だが、サンプル量が拡大したため直径が1.5倍の60cmに変更された。黒い部分がサンプル移送部
P-SMPのクローズアップ
復路モジュールの+Z面
復路モジュールは450Nスラスタを2基、22NのRCSを20基装備している
左がKa/X帯共用の高利得アンテナ(固定)、右がX帯を用いる中利得アンテナ(可動)

なお8月20日、MMXの打上げ日が以下の通り発表されました。

打上げ予定日:2026年10月20日(火)
打上げ予定時刻打上げ日:2026年10月20日4時41分03秒

MMXプロジェクトおよび機体の概要説明

以下は概要説明の書き起こしです。(敬称略)

登壇者
  • JAXA 宇宙科学研究所 火星衛星探査機プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ
    • 川勝 康弘(かわかつ やすひろ)
  • 三菱電機株式会社 防衛・宇宙システム事業本部 鎌倉製作所 MMX 開発推進センター MMX プロジェクト統括部長
    • 上原 晃斉(うえはら あきなり)

川勝: それでは私、川勝の方から火星衛星探査計画 MMXの概要と、それから今日皆様に見ていただく機体を、ここ2年ほど開発してきた最新の状況ということで、説明させていただきます。

MMXは「Martian Moons eXploration」の略です。成功すれば世界で初めての火星衛星からのサンプルリターン実現を目指しているミッションです。H3ロケットで2026年度の打上げを目指していて、ミッション期間は約5年、打ち上げ質量は4,480kgとなっています。

まず、我々が今回探査に向かう火星の衛星、特にサンプルを採取するフォボスについて簡単に紹介したいと思います。

フォボスは火星の2つある衛星のうちの1つ・第1衛星で、火星表面からの高度が約6000kmと、かなり近いところを回っている衛星です。発見されたのは1877年、直径は20kmから30kmと我々の月と比べればだいぶ小さい天体です。

このようなことから小天体としてフォボスを捉える向きもあって、フォボス自身がどのようにできたのか、それから我々が「はやぶさ」「はやぶさ2」で繋いできた太陽系内での水・有機物の輸送というところで大きな情報が得られる天体と捉えています。

もちろん今回行くのは火星の衛星ですから、火星の月としての観点も大事で、火星に近いところを飛んでいるということで、火星に隕石などがぶつかったときに飛散する物質の一部が火星の衛星にも届いている可能性があるのではないかと。それから火星は月に続く有人探査の大きなターゲットと捉えられていますので、この火星の衛星のフォボスがその拠点として使える可能性があるのかどうか、このような情報も得られると思っております。

一方で、まだ本格的な探査に成功していないということで「太陽系で最も重要な未踏峰」と呼ばれることもあります。

このようなこともあり、ターゲットを設定し、我々のミッションの目的を構成しています。我々、元々の起源は惑星科学のミッションでして、小惑星の探査、それから火星自身の探査を目指すグループもいて、両方について貢献できる天体として火星の衛星探査で惑星科学のミッションを設定しました。小天体としての目標である1番目、それから火星自身についてということで、2番目の惑星科学のミッションを設定しています。

一方で、「はやぶさ」でご存知の通り、探査というのは一件一件のミッションで探査技術を獲得して次のミッションに役立てていくということを積み重ねて、今の我々の複雑なミッションができるようになっています。

今回のMMXでは、火星圏への往還、それから火星の衛星に実際に着陸して数時間滞在してサンプリングという高度なミッションをするという高度な表面探査技術。それから通信ですね、美笹の地上局と我々の通信を合わせての最適な通信技術の獲得、ということをターゲットに置いています。

今言った主流のミッション目的に加えて、今回、その他にも大きな意義・価値を生む要素があると考えていまして、今の議論の中にも少しありました、フォボス上に届いている火星からの飛来物質。これが我々のサンプルの中で0.1%ぐらいの分量で入っているのではないかという風に見積もっていますけれども、これについて、火星についての新たな科学が開ける可能性がある。それから、有人火星探査の先陣を切るということで、将来の有人探査における拠点としての利用の可能性。それから今回NHKさんとJAXAで共同で開発したスーパーハイビジョンカメラを2台積んでいますので、それを介した様々なアウトリーチ活動ということも考えています。

ミッションのプロファイルです。打上げは今年度・2026年度を予定していまして、約1年かけて火星圏に到達します。そして火星の周回軌道に投入するということが一つ目の大きなイベントになります。「のぞみ」で達成できなかった火星の探査の入り口に立つということや、これまでも「あかつき」などで最初の投入が予定通りいかなかったということもありますが、今回は計画通り火星圏に到着したいと思っています。

その後約3年間火星の近傍に留まりますが、そのうちの2年半は火星の衛星フォボスの周りを周回観測し、その間にローバーの展開、それからフォボスの着陸、サンプル採取ということをやります。最後の半年は、もう1個の衛星であるダイモスを連続フライバイ観測……複数回フライバイして観測を実施し、火星の出発は2030年。約1年かけて地球に戻ってきて、「はやぶさ」や「はやぶさ2」同様サンプルが入ったカプセルを分離して大気圏に突入させ、オーストラリアで回収するという計画になっています。

(動画を見ながら)打上げはH3ロケットの1番大きな24タイプで、大きな機体ですのでロングフェアリングに収納して打ち上げます。打上げ後すぐに太陽電池パドルを展開したり、着陸脚もロケットに収納するように縦に折りたたんでいるので、これを着陸のとき安定した状態になるように展開します。

約1年後に火星に到着して、最初の火星接近時に4つのメインエンジンを噴射して、火星の周回軌道への投入ということをやります。最初に投入されるのは長い楕円軌道で、その後、複数回の軌道制御をして軌道の高度を下げて、最終的にフォボスと同じ軌道に入ります。ここで1つのモジュールを分離して、火星の衛星・フォボスの詳細な観測を始めるということになります。

滞在の約1年半後ぐらい、中間くらいでこの着陸のオペレーションを行い、2時間から3時間の滞在、その間にサンプルを採取するというオペレーションになります。通信時間がかかりますので、ほとんどオート、自動での運用となります。

離陸して再び周回観測に戻り、できればもう1個の着陸点からサンプルを採取します。帰るときに探査モジュールを分離して、復路モジュールだけで帰ってきて、地球の直前でカプセル……これは「はやぶさ2」と同じ形状ですけれども、1.5倍くらい大きいものになりますが、これを大気圏に突入させてサンプルを回収します。

ちょっと今の中で出てこなかったローバーについて、CNESとDLRの方で準備してもらった動画を使って少し紹介もしたいと思います。今回のローバーは約30kg、少し大きめのもので、中身はもう1つの宇宙機ですので小型衛星並みと思っておりますけれども、これをCNESとDLRが共同、ほぼフィフティ・フィフティで分担して開発してくれて、これを搭載します。フォボス表面上での活動期間は約3ヶ月とかなり長い期間を予定していて、科学観測機器も4つ搭載しています。

これはDLRの工場での試験、その後CNESに行って、電気機器などを用いての総合的な試験ということを実施しています。

このローバーは、我々のに搭載して、我々が着陸する前にこのローバーを分離します。我々が着陸点へのリハーサルをしている降下のときに下ろすということで、先に降りて、その周辺、基本的にはこの表面の状態ですね、それが我々の想定通りになっているかということを先にチェックしてもらうというような役割も担っています。

自動でこう展開して……さきほどの映像は20倍くらい加速しているものですけれど、実際はゆっくり動くことで、跳ね上がったりそういうことをしないような形になっています。向こうでの、地球の1000分の1という重力を上から吊って模擬しながら、走行性能に問題ないかというような試験をやっているところです。左がDLRのプロマネ、右がフランスのCNESのプロマネです。

次に、今回見ていただく機体の紹介になります。探査機システムの開発は、この隣にいらっしゃる上原さん率いる三菱電機のチームが開発を担当してくださいました。

今回、火星という重力天体に軌道投入しなければいけないということで、パワーがある化学推進系を主推進とすることを選んで、結果として推進薬はたくさん必要になるので、4,480kgと我々が打上げた月・惑星探査機の中では「かぐや」を抜いて最大の探査機という形になります。

大きな軌道速度を効率よく得るためにということで、3段式の構成になっているというのが大きな特徴で、往路モジュール、これは火星に行くまでの推進系を担います。それから、探査モジュールと復路モジュール。この2つが一体となった形で火星圏で観測、それから着陸の運用をします。それから火星を出発するときに、観測機器や着陸脚を搭載した探査モジュールを分離して、復路モジュールだけが帰ってくるということです。

着陸するときに自動・自律で着陸するということで画像航法を使いますが、これは我々が月探査機SLIMで三菱電機さんと共同で開発した画像航法の方式を活用します。こういうことで技術の継承が図られています。次をお願いします。

ミッション機器。13のミッション機器を搭載します。フォボスは最初に行く天体なので様々な観測をして、より良い着陸点を選ぶためにということで、たくさんの観測機器を搭載しているということと、それから11の科学ミッション機器と、2つは探査技術の獲得ということで、1つは先ほどのハイビジョンカメラ、もう1つは将来の有人探査に備えた放射線環境のモニター機器を、惑星科学とは別のミッションとして搭載しています。

サンプル採取機器は2式。我々が開発するコアリングタイプと、米国が提供する気体を吹き付けるタイプというのを載せています。

それから黄色で帯をかけている機器がいくつかありますが、これは海外機関が提供するということで、このミッションに参加することになった機器です。近赤外分光計・MIRSはフランスから、それからガンマ線中性子分光計・MEGANEは米国から、それからローバーはフランス・ドイツ共同です。

今、観測機器等であったように、大きな国際協力を図っているということが1つの特徴で、日本が主導する月・惑星探査ミッションとしては最大の国際協力の体制となっております。今申し上げた観測機器だけではなくて、地上局、深宇宙局でのトラッキングや、サイエンティストの支援など、広い協力が各機関から得られています。次をお願いします。

海外機関、それから日本の主だった宇宙関係の企業が入っての開発になったことと、それからサイエンスコミュニティも国内外で広く広がって、計画段階から入ってもらっているということです。

プロジェクトは2020年に事業化されまして、その後2024年の打上げを目標に進めてきましたが、ロケットの開発の状況もあって、2026年に打上げを延期しました。その間、入念に総合試験等を重ねて今に至るということです。観測機器13個、フライトモデルができて、それが揃ったところから組み立てを始めました。

いろいろな試験をやってきたわけですけれども、最初、個々の機器の電気接続から始まって、初期電気試験というものを鎌倉にある14工場というところにある大きなクリーンルームで始めました。右にあるのがその様子です。

これは拡大したところですが、大きなところで3つのモジュールを並行して組み立てるということで進めてきたということです。これ動画になっていまして、日々の動きを1枚ずつ撮って、タイムラプスで繋いでもらいました。

左奥にあるのが復路モジュールですね。右はちょっとぼかしてありますが、これは往路モジュールで、手前にあるのは板みたいに見えますが、着陸脚が付いていない状態の探査モジュールはこんな感じですね。裏側に電気機器、表側にセンサーということで、このように裏にひっくり返したり、表にひっくり返したりということで機器を組みつけてきました。

1個1個機器を組みつけて、配線して、問題ないかチェックするということを1個1個やっていくので、100個を超える機器がありますので、組み立てだけでもだいぶ時間がかかったということです。で……1本、脚が付きましたね。探査モジュール手前にあるのがローバーですね。後でしっかりと見てもらえると思います。

奥の方の復路モジュールもアンテナが付いたり、これも4面ありますので、いろいろひっくり返しながらつけていくということをやります。

初期電気試験、それからその後の熱真空試験は、この復路と探査モジュールだけで行いますので、組み上がっていったところでこれを結合して、次のフェーズに入るということです。これ上に乗せますね。こんな感じです。はい。

今日は、探査モジュールと復路モジュールが付いた部分と、それから往路モジュール、これらはつなげずに2つに分けて、同じ部屋で見ていただけると思います。

で、熱真空試験は先ほどのコンフィギュレーションでやりました。右の写真、JAXAデジタルアーカイブの方で公開していますけれども、このマイナスZ面と呼んでいる1番下の面に観測機器とかローバーとかサンプラーとか全部載っているんですけど、1番綺麗に写っている絵だと思い載せています。

機械環境試験を去年の10月ぐらいにやりました。これはロケットに載せている状態の振動環境や音響環境で探査機が壊れないかという試験だったので、この時期だけ往路モジュールと、復路モジュール、探査モジュールを一体に結合させて試験をしました。全長5mぐらいの高さになりますが、鎌倉でこの姿になったのはこのときだけですね。こちらでも推進剤を充填してロケットのフェアリングに載せる直前にこの形になるということで、あまり見る機会はありません。

EMC試験は、電気的なノイズとかに問題がないか、通信の性能に問題がないかの試験をやり、サンプリング試験……これは今年の1月ですね。一通りの環境試験が終わった後、サンプリング装置がきちんと駆動できるか、そのときに他のいろんな機器と干渉しないかということなどを実験しました。

ちょっと難しいのはですね、サンプリング装置はフォボスの1/1000Gの環境で動かすのに十分なモーターや駆動能力しかないので、地球の重力では動かないんですね。なので、上にこの銀色の棒とか、上から細い線が吊ってあるのが分かると思いますけれども、地球の重力をキャンセルするような装置を作って、しかもこのアームが動きますから、それが追従するという形でやりました。そして、問題ないということを確認しました。

3月までこの鎌倉の作業をやって、3月末に鎌倉からコンテナ2つ、トレーラー2つに載せて種子島に移しました。この間、いくつかの機器ですね、サンプラーやカプセルなんかは、これまでの試験でいろいろと汚れるということで取り外しまして、サンプルを汚染しないように綺麗に洗って、もう1回種子島で集合と。種子島で組みつけて電気試験をやって……ということでSTA2という衛星試験棟の方でずっと電気試験等をやっていました。これが6月末に完了したということで、今回、SFA、フェアリング組立棟と呼んでいますけれど、推進剤の充填と、ロケットのPAFやフェアリングへの組み付けという、探査機としての試験ではなく、飛行のための準備というフェーズに入ったということになります。

今回、推進薬を充填するといろいろ安全の取り扱いが難しくなりますので、その直前の機会を捉えさせていただいて皆さんに見ていただく、ということで、お盆の時期になってしまいましたけれども設定させていただきました。ということで、これはまとめなので読み上げませんけれども、MMXとは、という話から今の状況までまとめています。私からの説明は以上です。

質疑応答

MMXは打ち上げの時期がものすごく限られるが、26年度中の打ち上げということであれば1番適した時期はいつ頃になるのか?(産経新聞・伊藤)

川勝: 打ち上げの実施時期というのとは別に、軌道計画、軌道設計というような観点でのお話とさせていただきますけれども、そういうことで言うと10月から11月にかけてが出発時期として、これはどこの国が上げる探査機でも、一番いい時期と考えるんじゃないかと思います。

——当然そこを狙いたいのか

川勝: どう答えましょうか?

広報・岸: 先日のH3ロケット9号機打上げ後の会見でも申し上げた通り、まだ打上げ時期については関係省庁であったり、色々な関係者の皆様がいらっしゃる中での調整をしております。それぞれの皆様との調整が整ったところで発表させていただきますので、本日の会見ではそこまでは明言を控えさせていただきたいというのが現状でございますので、そこはプレスの皆様もよろしくお願いいたします。お気持ちは分かるんですけれども、きちんと関係者との調整が整うというのが大事なので、そこはご理解をいただきたいと思います。

MMXのアウトリーチについて。NHKと共同開発したスーパーハイビジョンカメラの撮影映像をどのように公開するのか。「のぞみ」「はやぶさ」のように何か愛称のようなものがつく予定は(東京とびもの学会・山鹿)

川勝: スーパーハイビジョンカメラで撮影する映像の取り扱いについては、ここでは詳細な言葉遣いができないところもあるので、概略の話をさせていただきますと、「かぐや」でハイビジョンカメラを搭載して、いろんな形でNHKさんと協力して、活用させていただきましたけれども、それに準ずる形でルールを作って進めていこうという話はしてきました。

それから愛称については、MMXについては今のところ考えているものはありません。

10月から11月頃が適しているということで、間もなく打ち上げを控えているという状況には変わりがないと思うが、打ち上げに臨むことへの意気込み、今の気持ち(NHK・河本)
川勝: もちろん我々は、火星の衛星の探査やサンプルを持ち帰るためにこれまで計画を立てて、探査機を作るところも簡単な道ではなかったですけれども進めてきましたので、先ほど申し上げたように、打上げ前の大きなステップとして、探査機としての開発が完了したという節目が来たというのは、とても感動しています。いよいよこれが宇宙に飛び立って活躍を始めるスタートラインに立ちつつあるというのは、楽しみにしています。

——NHKと共同開発のスーパーハイビジョンカメラも将来的には一般の方も楽しめるようになると思うが、どういうところが見所になるか

川勝: かなり解像度が高いカメラを載せていますので、撮るものがフォボスであっても、あるいは火星であっても、かなりダイナミックなものが撮れるんじゃないかな、という風に期待しています。なので、これまでもいろんな探査機が撮った火星の画像を見ましたけれども、より近くに迫った感じで見られるんじゃないかなと思います。

フォボスは火星からの高度が約6000kmなので、我々がここから月を見たり、月から地球を見たりするのと比べてずっと近いんですね。どっちかっていうと国際宇宙ステーションから地球を見ると、丸い地球は見えないですよね。あれに似ている感じがするぐらい近いので、そういうところで、ああいう高解像度のカメラで撮ると何が見えるのか、というのは楽しみにしています。

——MMXの探査機の大きさは高さ5mでよいか。 横はどれくらいの大きさか

上原: 探査機の幅がSAP(太陽電池パドル)展開後で約9mになっています。高さは脚からスラスターまで5.3mぐらいの高さになっております。

脚が結構広く取っておりまして、着陸するときに転倒したりバウンドしたりしないように広く取っているんですけれども、この足の幅が大体約4.5mぐらいの幅を持っております。それぐらいのサイズで設計しております。

今回ミッションを支えるのが化学推進ということで、要所要所の非常に大事なポイントを実現するにあたり信頼性の確保というのをどんな風に進めてきたか。考え方のところを川勝先生に、それから実際に製造に当たられた観点で上原様に(フリーランス・秋山)

川勝: 推進系と言ってもいろいろ構成要素がありますけれども、スラスタやバルブなどは実績を積んできたもの、それから検証の方法、どこをこのミッションに合わせなきゃいけないかというようなことがありますから、そこはできるだけこれまでの実績を踏襲するという話をしました。

それからもう1個ですね、今回火星圏へ投入するというところで「あかつき」の投入に似ているシチュエーションがあって、あれと同じような問題が起こらないように、ということは設計の当初から重要視されていまして、往路、復路、考え方はそれぞれ別なんですけれども、塩が生じてバルブを引っかけさせないように、という対策をしっかりと打っていこうというのを、もう1つの大きな方針として立てました。

上原: 推進系の信頼性ということなのですが、製造上では、やはり他の機器の搭載や試験と違って、特別ここだけ重要視するというわけではなくてですね、探査機、それからこれまでの宇宙開発で実績のあるやり方を踏襲しつつも、それに応じた最適な検証方法を我々の方でJAXAさんとすり合わせをしながら製造しております。

これはですね、部品1つ1つ丁寧に取り扱いながら、それらの組み立て、それから製造後の検証までしっかり確認していくというところで進めてまいりました。

MMXの総開発費と、何人ぐらい関わって作ってきたのか(MBC・藤本)

川勝: 553億円ですね。これは政府の予算の中で、この総開発費として事業として認められているものになりますので、公開されている資料に載っているところがあるんだと思います。

それから、どれぐらいの人が携わっているかというのは、なかなか難しい質問で、時々聞かれるんですけれども、部品1個取ったときに、それがMMXのためのボルトなのかといった場合など、どこまで含めるのかというのもあるんですが、大体1万人と答えています。

我々JAXAの中でMMXのプロジェクトに何らかの形で関わっている人は100人以上いて、メルコさんも多分それ以上、そこの子会社の方、あるいはミッション機器の方、海外の方とか含めると、1万人以上という話はしています。あるいはもっと多いかもしれません。というのは検討を始めてから10年、開発を始めてからも5年経っています。常に働いているのがそれぐらいで、人が入れ替わっていくので「私がどこかで関わった」という人を15年のミッションの最後まで入れると、もっといるかなと思っています。

——10年以上かかり、またこれから5年かけて、日本が主導するうえでポイントとなる部分、宇宙産業の中で日本がこういうことを担っていくんだというポイント

川勝: ちょっと訂正させていただくと、検討を始めてから10年、プロジェクトになってから、6年かな、で、これから5年ですね。

日本が主導して、海外機関がこういう形で入ってくれるというのはとても重要なことなんですけれども、それは「はやぶさ」や「はやぶさ2」の小天体探査、それからサンプルを採取するという難しいミッションですね、これを成功させてきたという実績があるからなんですね。

これらがあるので、小天体探査やサンプルリターンをやるんだったら、アメリカやヨーロッパが自分でミッションを立ち上げるよりも、日本が立ち上げるミッションに乗った方が確実に成功する、という考えで参加してくれているということだと思うんです。

なので、そういうような期待も受けているという思いで、日本のためはもちろんですけれども、世界のためにこのミッションを成功させたいと思いますし、これからこのような形で日本が実績を上げたミッションが、海外の信頼も得て、次に繋がっていくといいかなと思っています。

開発全体を通して難しくて苦労したこと、それをどのように解決したといった何か印象に残っているエピソードをそれぞれの立場で(フリーランス・大塚)

川勝: じゃあ、上原さん先に答えてもらって、それ以外ので何か考えます。先に話すと取っちゃうかもしれないので。

上原: 我々三菱電機は今回の探査機のシステムを取りまとめさせていただきまして、各ミッション機器を搭載する形で組んできております。主に開発しておりますのが衛星で言うバスと呼ばれるところになりまして、こちらのMMX往路モジュール、復路モジュール、探査モジュール、それぞれのベースとなるところですね。通信系、電力系、それから制御、推進系などがあります。

それから、特に特殊なのが着陸脚と呼ばれるところも開発を行っています。今回、火星衛星フォボスに着陸するということで、また、複数回のサンプリングを行うということで、月や地球に対して重力も非常に小さい影響下の中で着陸する必要がありまして、先ほどちょっとご紹介しましたように、MMXが落ちるときに重力が小さいことでバウンドしてしまったり、転倒してしまったりしますので、それらをいかに抑制するか、要は衝撃を吸収するかというところがポイントになってくると考えています。

この衝撃を吸収するような機構を取り入れた着陸脚の開発が、一番大変な思いをしまして、なかなか一筋縄ではいかない、という表現がよいのかなと思いますけれども、そういった開発・設計も苦労しながら、やはり要素技術の試験をやったり、この着陸脚を使って衛星を模擬した形での4本脚での試験を独自に実施したりとか、通常の衛星ではやらないような検証を踏まえながら積み重ねてきたというところが非常に大きな点でした。

で、もう1点だけ。MMXは3つのモジュールに分かれています。これらを同時に開発を進めなくちゃいけないというところが、やはりちょっと大きな課題かな、と考えていました。簡単に申し上げますと衛星約2.5機分ぐらいの機器が載っているような、そういうイメージを持っていただければいいかなと思います。

往路モジュールの方には電源系や推進系が載っています。復路モジュールも同様ですね。これらを限られた開発スケジュールの中で、2つを一緒に流すような形でやらなければならない。これは工場のリソースの問題であったりとか、人も含めて対応する必要がありましたので、こういったところをいかにうまく生産していくかというところは、やはりちょっとこれまでにない取り組みとして、緊張感を持って確実に仕上げていく、そういうところに取り組んでまいりました。

川勝: 私からミッション機器の話をしますと、13のミッション機器を積んでいるんですけれども、そのうち特に難しかった3つを挙げたいと思います。

1つはサンプリング装置ですね。我々が作っているコアリングサンプラ、C-Samplerと呼んでいるものですが、ロボットアームが目立って見えますけれども、手先についているサンプルを取るコアラーの部分、これはかなり精緻なメカでして、そこの部分があるのと、あと着陸したときに地形を認識するための地形認識カメラ。レーザーで地形を撮って、といった機構などもあるので、サンプラーとは言いますけれどもひとつの小型衛星並みの複雑なシステムではありました。

それから、さっきビデオで出ましたけれどもローバーですね。これはCNESとDLRが主体になってくれましたけれども、これも1つの独立した小型衛星並みのシステムです。

あとカプセルですね。これは難しいという意味では、我々の中では実績が1番ある「はやぶさ」「はやぶさ2」のカプセル設計を踏襲していますので、そういう意味ではシュアだとは思っているんですけれども、でもやっぱりひとつの機器ですし、独立で動かなければいけないというところで、試験なんかでは注意深くやったところです。

あとは、さっき上原さん言っていただいたような、実はやっぱり複雑だった、やってみて複雑だったという話で、3つのモジュールもありますが、運用の流れを見ても惑星間の航行があって、それから向こうで着陸する以外でやっているのはずっと周回観測なんですね。これは「あかつき」や「かぐや」でやってきたこと。それから着陸のオペレーションは「SLIM」あるいは「はやぶさ」に踏襲するということで、科学衛星をたくさん作ってきましたけれども、「あかつき」「はやぶさ」「SLIM」この3つで培った色んな技術を合わせて初めてやることができたし、合わせてみると大変だったな、ということで3つのモジュールになり、小型衛星が3つも付いていて、日本人のメンバーだけではなくて、外国の人とのコミュニケーションもしつつというところで、今から振り返れば懐かしい話ですけれども、楽しかったですし、大変でした。

フォボスに着陸の際に分離した往路モジュールと復路モジュールは再結合の際に相互にデータを飛ばすのか、それぞれの航法カメラを使っての結合なのか(東京とびもの学会・渡辺)

川勝: 再結合はしません。MMXは火星への投入で軌道制御が全部終わったところで往路モジュールのタンクはほぼ空になりますので、そこで往路モジュールは分離して、もう投棄ですね、そこで終わりです。

着陸するときはまず帰還モジュールと探査モジュール一体で降りるんです。そして一体で上がります。で、帰るときに探査モジュールを投棄します。

2015年に検討を始めて、その時2022年の打上げを想定して始めたんですね。その時に色んな技術の選定をしたんです。で。再結合、上でのドッキング、特に火星域でのドッキングはちょっと6年じゃ間に合わないということで、選択肢から外しました。

三菱電機は「SLIM」は実験機、MMXは探査機という意味で、実験機ではない探査機の主契約は初となるという認識で合っているか(フリーランス・宇推)

上原: 深宇宙探査という意味では初めての開発になります。

——三菱電機として初めて深宇宙探査機を作っているというところの思い入れや意気込みを

上原: 今回、MMX探査機の開発に三菱電機を選定いただきまして、先ほどの2020年の話がありましたが開発に足掛け約7年間。実はその前から概念検討で一緒にやらせていただきまして、約10年間にわたりましてJAXAの皆さんと一緒に検討の方と、それから製造、試験、ここまでやってまいりました。

この過程において、やはり色々な関係部門のメンバー、チームの仲間たち、それからベンダーさん、それら皆さんチーム一丸となって取り組んでまいりました。

他の衛星と違いまして、やはりこの探査機特有のミッションがあるということで、その設計も、機体の形状からお分かりになるかと思いますが綺麗な四角形をしておりませんで、やはり軽量化が求められるような特殊な設計も踏まえながら、このミッションを達成させるということで開発を進めてまいりました。

その分、大規模かつ複雑なものにはなりましたけれども、やはりここまでしっかりみんなで頑張ってこれたところの思いを、次の打上げ、それからミッション成功に向けて、しっかりJAXAさんと連携して取り組んでまいりたいという風に考えております。

——「はやぶさ」や「はやぶさ2」で小惑星のサンプルリターンを成功させてきたが、MMXで大きな違いは何か。「世界初」という店での大きな意義。QSO(疑似周回軌道)ということだがフォボスの周りを回ることは難しいのか

川勝: まずサンプルの話をします。サンプルを採取して分析するというのは「はやぶさ」から続いてきているんですけれども、なかなか難しい技術で、「はやぶさ」から「はやぶさ2」、それからMMXと、色々と進歩してきています。

特にMMXに関係するということで技術的な話をすると、今回、フォボスの表面から2cm以上の深さのところから……表面は紫外線などで変質しているところがあるので、それから10g以上のサンプルを取ってきてください、というサイエンス側からの要求が先にありました。それからサンプリング装置や探査機などを考えることになりました。

ですので量的にも多いですし、そういうサンプルを取るためには数時間でもきちんと着陸して、ああいうロボットアームを動かして、小石などを挟まないように、ということをやるということになりました。そういう意味で、まずサンプルを取るというところで大きくステージアップしたものを準備したということがあります。

逆に、「はやぶさ2」よりも楽と言ったら変ですけれど、やりやすいところがあって、「イトカワ」も「リュウグウ」も、行く前は光の点にしか見えないところだったので、どんな天体かが分からなかったんですね。もう岩のようなものかもしれない、砂地があるかもしれないし。

フォボスはこれまでの火星探査から、遠くからだけでも撮れていまして、それから、おそらくレゴリスという月の砂のような、ああいうもので覆われている可能性が高いだろうということが分かっていたので、それでも密度とか空隙度とか色々分からないことはあるんですけれども、設計がしやすかったという面はあります。

それから、持って帰ってきて分析する設備が宇宙科学研究所にありますけれども、そういうところでも「はやぶさ」「はやぶさ2」の実績や、あそこで途中で考えついてうまくいったことを、これからは最初から計画に取り入れて、こういうような分析装置を入れておこう、といったものはかなりグレードアップしています。

そういうことで、今回海外のチームもサンプルの分析に加わるんですけれども、今の段階、計画を立てる段階から入ってくれていて、そちらの経験や知恵なども入れてということができています。

サンプルはそれくらいにさせていただいて、QSOについて。正確な話をするとフォボスは火星の周りを回っていて、MMXも火星の周りを回っています。で、近くを回っているので、近くで観測ができるという状態です。

「回っている」というのはどういう意味かと言うと、その天体の重力に支配されて運動している、ということで、フォボスは小さすぎて、フォボスの重力に支配されている領域というのはとても狭くて、ほぼ表面スレスレなんですね。

なのでフォボスだけの重力を主として捉えられるところというのは、もう観測とか安全に観測するのに適さないくらいの近い距離になってしまうので、我々はちょっと外にいて、それは2つが両方とも火星の周りをうまく同期しながら、位置関係をコントロールしながら回っているということで、フォボスの周回軌道ではなく、疑似周回軌道ということでQSOと呼んでいます、ということです。

——QSOは火星から少し偏心しているような感じで回るということか?

川勝: そういうことです。

宇宙研では惑星探査でPLANETシリーズがあったが、それら500kg程度の探査機に対してMMXに継続性はあるか、次期構想はあるか(NVS・崎田)

川勝: PLANETで呼ばれたのは、PLANET-A(すいせい)、PLANET-B(のぞみ)、PLANET-C(あかつき)ですよね。JAXA統合の段階で、Mシリーズのロケットに限定しない選択肢が我々にできて、ただ「あかつき」はもうM-Vロケットを目指して作っていた、それから「はやぶさ2」は「はやぶさ」と同形で作ろうというようなこともあって500kg級のところでつくっていたというのが、そこまで継続していたというのが正しいかもしれませんね。

MMXは「はやぶさ2」が打上がった時、次の惑星科学のミッションで何をやるかという話が出た時に、その頃はもう統合からだいぶ時間が経っていて、我々の戦略的中型計画と今呼んでいますけれども、我々の前は、ちょっとリカバリーでしたけれども「XRISM」とかですね、そういう計画になっていますが、H-IIAあるいはH3ロケットで上げられるクラスのミッションということで構想を始めました。

ですので、今、どこの天体に行くとか、どういうようなミッションをこなすか……天文だからASTROとか……ではなく規模でシリーズを分けていまして、そういう中で、このH3クラスである惑星科学ミッションということで、ミッションの目標もそれ相応の意義・価値の高い、規模の大きいものを立てて、探査機を作るということになって、今のMMXが生まれたという風に考えています。

——2年後にはUAEの火星探査機も打ち上げられるが、そちらとの連携はあるのか

川勝: これはH3で打上げるという意味で共通だという意味でしょうか? まず探査機やミッションという意味では、今は交流はないです。

今日の機体公開でぜひここを見てほしいというところがあれば。あと、本日はどのような形(構成)で公開されるのか(宇宙作家クラブ・渡部)

上原: そうですね、ひとつに絞ってというのはちょっと難しいかもしれません。私としては細かいところ1個1個まで見ていただきたいなというのが本音でして。それはですね、やはり、これまで関わってきたところが1つ1つ丁寧に作り上げていかなければいけない、という思いで携わってまいりましたので、形状の違いから、先ほどご紹介させていただきました着陸脚だとか、そういったところも色々とご覧いただければと思っております。

それから、今日の姿勢、それから探査機の構成の方になりますけれども、現在フェアリング組立棟の方で、推薬充填前の形態としまして、復路モジュールと探査モジュールが結合された状態で、1つのドーリーの上に乗っております。

それからもう1つのドーリーの方で、往路モジュールが載せられている状態になります。今、画面の方に出ているような形態ですね、それぞれ配置しております。探査・復路モジュールが結合した状態のところについては、少し角度を上げて、もう少し見やすくなるような姿勢でご確認いただければと思っております。

川勝: 皆さんも1/2模型とか見たことあると思うし、この模型もそうなんですけれども、どうしてもこういう形になっちゃうんですけれど、見所はこっち(下面)なんですね。ここに、さっきのローバーにしろサンプリング装置にしろミッション機器が載っていて、そこはこの装置、あの装置といろいろ説明したいところなんですけれども、こういうことなので、こういう模型を置くときにはいつも下に鏡を置いてもらって、見えるようにしてもらっているんです。

今日は、直前まではこの脚が上を向くような形で置いていたんですけれども、メルコさんにもお願いをして、ちょっと傾けていただいて。ここまで横にはなっていないかもしれないんですけれども、-Z面と呼んでいるんですけれど、ここを見ていただきたいと思っております。

火星の衛星の起源を探ることで、その生命が誕生、居住可能な環境の起源を探ることができるという理由について詳細に(日本経済新聞・森)

川勝: これはですね、火星の起源と、生命居住可能な環境があるということが直接結びつくというよりも、我々、火星の衛星からのサンプルを取ってくるんですけれども、それがどういう素性のものか、どういうような歴史を経ているものかということをまず知らないと、その文脈の中で、サンプルの色んな細かいことで分かってくることの位置づけができるんですね。

「捕獲」と言われているもので、火星にぶつかっていない原始的な小天体の残りだということであればその文脈で、火星に「衝突」したということになれば、小天体も半分なんですけれども、昔の火星の成分なんかも入っているという目でそのサンプルを見なきゃいけない。

どちらにしても、古い天体、小天体の流れがあるので、太陽圏の中での生命の発生する環境と繋がっていくんですけれども、まず最初に起源を明らかにしないと、取ってきたサンプルの意義・価値をマッピングするというか、文脈の中で位置づけられないということです。ですので大きな2つの柱を立てています。

コアリングとニューマチック、しかもロボットアームの先についているということになると、採取したサンプルをどのような移送経路でカプセルに入れるような形になるのか(NVS・金子)

川勝: ロボットアームを使います。コアラーは最初からロボットアームの先に3本付いています。コアラーは打ち込んで、離れないんですけれども、そこの中身の内側の筒を引き抜くことでサンプルが入った状態のコアを作ります。

それを軌道上に上がった後、カプセルに搬入する装置があって、そこにこう付けるんですね。最後はバネでカプセルに押し込むんです。

ニューマチックサンプラーの方は脚の先に付いているんです。機体が。足の膝くらいのところまで彼らの機体でサンプルを巻き上げてもらいます。そこにキャニスターという入れ物があるんですね。そこまでがニューマチックサンプラーの役割で、それをやはりロボットアームで取りに行きます。取りに行って、カプセルに搬送する装置に入れる。

ですのでロボットアームは我々が作る方ですけれども、両方のサンプルのカプセルへの挿入のところに寄与します。

——コアリング取得できるサンプルの形状はスティック状みたいなイメージでよいか

川勝: そうですね。直径が2cm、長さが8cmぐらいの筒の中に入っている形で得られます。

——ミッション最初の山場として火星軌道投入がある。今回その軌道投入で使うメインエンジンはてどういった実績のあるエンジンなのか?

川勝: これは450N(ニュートン)の推力のエンジンで、メーカーはIHIエアロスペースさんが作っていただいているもので、静止衛星や他の衛星で多くの実績を積んでらっしゃるエンジンをメルコさんのもとで組み入れて使っています。

——模型の1番上についているのが火星軌道投入のエンジンで、その2段目についているのが火星軌道離脱のエンジンで、着陸と離脱のときには重力が少ないので、スラスタぐらいの勢いで上昇できるという考え方でよいか

川勝: そのご理解の通りです。